『自分専用の工夫』を見つけよう!
さら就労塾に限らず、就労移行支援事業所では日々さまざまな訓練が行われています。
訓練をする目的の一つは、もちろん仕事のスキルを身につけたり伸ばしたりすることです。訓練をされている皆さんも、それを目的に毎日努力されていることと思います。
訓練の目的は、実は仕事のスキルを身につけたり、伸ばしたりすることだけではありません。
自分の得意不得意をみつけて、仕事選びの参考にする。あるいはこれからどんな訓練をしていくかを考える。それも大事な目的のひとつです。
これは、「不得意だから諦めよう」という話ばかりではありません。人の得意不得意というのは、本当に細かいところにあります。たとえば「酢豚が苦手」と言っていた人が、実は中にパイナップルが入っているのが苦手なだけだったとか。暖かいパイナップルが苦手なだけで、何も酢豚全部を諦める必要はありません。仕事や訓練の中でも、同じことがあります。
「パソコンは苦手」というのが正確には「パソコン画面の明るい光が苦手」なのだったり、あるいは「電話応対は苦手」というのが「電話応対中にメモを取るのが苦手」ということだったり。よくよくつきつめると、自分でもよく認識してない部分的なところがひっかかっていたりします。
パソコンの光が問題なら設定で弱くすることもできますし、調光加工された眼鏡を使って楽になるかもしれません。メモが苦手な理由は人それぞれ色々ありますが、「片手で受話器を持っているからメモ帳を押さえる手が足りない」のが理由だったらA4の大きなメモ用紙を使ってバインダーで固定すれば解決できます。理由がささいなことほど、周囲も本人も気付きにくかったりします。
この工夫、職員が考えて提案することもありますが、ご本人が考えてさりげなく取り入れていることも多々あります。何しろ生まれたときから自分の「苦手」につきあっている張本人、自分用の工夫を考えるなら最適の人物と言えるかもしれません。
苦手な人の多いタスク管理で、例をあげてみましょう。
たとえば下北沢のAさんの手帳。
下半分は月のカレンダーになっていてスケジュールが書き込まれていますが、上のフリーエリアはふせんを貼ってTODO管理に使っています。
ふせんは移動ができるので並べて優先順位を考えることもできるし、毎月やることなら使い回すこともできる。今日やることべきことを毎朝選んで並べておく、といった使い方もできます。
Bさんが独自につくっているタスク管理シートは、週単位のスケジュールになっています。やったことでも忘れてしまいがちなBさんは、この表に赤字で「済」を入れてタスクを管理しています。これもBさんが「記憶」というご自分の苦手に真正面から立ち向かって、試行錯誤で生み出した工夫です。
個人情報が多いのでボカした写真しかお見せできないのが残念ですが、どちらも自分の苦手を知っているからこそ自分に一番効果的な方法を編み出せている。細かいところまで、独自の工夫が行き届いた内容になっています。
苦手だけど、やらなければいけないこと。それは努力しないといけない場合もありますが、ちょっと柔軟に考えてみれば工夫ひとつ、道具ひとつで解決してしまうということもあったりします。何がひっかかって「苦手」になってしまっているかをみつけ、それを回避する手段を考える。この工夫をみつけることで、今まで「苦手」と思っていたことが「得意」に逆転することだってあり得ます。障害者雇用でよく言われる「職場の配慮」というのも、これに近いと言えるかもしれません。