卒業にあたって
発達障害に悩まされていくつもの職場を退職することになってしまったが、偶然と幸運、そして何より下北沢事業所の職員の方々のご支援により、利用開始から8カ月程という異例の速さで再就職をかなえることができた。短い間であったが、卒業を前にして、気がついたことや「これは良い」と思ったアドバイスについて書いておこうと思う。
■ツールを使いこなそう
私の傾向として、タスク管理が苦手で、手持ちの仕事がおおむね3つ前後抱えていると非常に混乱してしまうことがある。そういった場合は、まず相手に口頭で複数の仕事を一度に指示することを避けてもらうようにお願いをすると良い。そのうえで、職員の方のアドバイスに従いExcelの「ガントチャート」を用いて視覚によってタスク管理をすると、現在の状況が明確になり、安心して取り組むことができることに気がついた。
また、自分の理解が正しいと思い込み、聞き取りにくかったことなどを再度質問しないで進行させてしまい、後でトラブルになる傾向があった。こういった思い込みの傾向を正すには、これも職員の方のアドバイスであるが「業務整理表」といったツールを使い、指示の整理ならびに疑問点の洗い出しを行うとよいと思う。
■コミュニケーションの問題を乗り越える
訓練中には、コミュニケーションの問題も顕在化してしまった。問題点としては、①文面・言い回しなどが自己流・へりくだり過ぎなどでその場にふさわしい言い方ができず相手に違和感を与える ②相手の考えや置かれた立場に配慮するのが苦手 ③自己の言動が他人にどう思われるのかを考えるのが苦手、といったものである。
これらへの対策としては、まずメール文面においては社内・社外向けの定型文のフォーマットを作っておき、それに当てはめるかたちを取る方法がある。
また、会話においては、問題を自覚したうえで常に自分へ「相手の事も考えて」と言い聞かせること。大事な事を伝える前に一拍置いて少し考えるのも有効な方法だと思う。さらに職場に「たまに違和感のある言葉遣いをしてしまうが、都度指摘していただければ直すように努力します」と伝えて配慮をお願いするのもひとつの解決策であろう。
訓練中には主治医より「あなたは他人から100の力で行うべき仕事を指示されたら、それを500~600の力が必要だと受け取り、注力し過ぎたり強度のストレスを感じてしまう。相手の言うことを過大評価しない方が良い」とも指摘された。つまり、仕事ごとの”アクセルの踏み具合“を調整できればストレスもコントロールできるということである。セルフケアシートなどで、都度ストレスのかかり具合をチェックするのも一つの方法だと思う。
■自己肯定感を高めることが大事
訓練中には、緊張感から多動や強張りが出てしまうことも多々あった。その背景として考えられるのが「完璧主義」。多くの物ごとを完璧に出来ていないと気が済まない心理が働いて、それがいたずらに緊張を高めていると考えられる。カウンセラーの方が曰く「自己評価がいたずらに厳しすぎる。もっと現状を認めることで気を楽にするようにしてください」との言われた。大概の物事は7~8割の出来で良いと割り切ることも一つの方法だと理解できた。
短い間であったが、上記の他にも書ききれないほどたくさんのアドバイスと気づきを得ることができた。
心の平静を取り戻してこそ、健全に思考することができ、良い選択肢を取る事ができるということを思い知らされた月日でもあった。今後の仕事のなかで、いただいたアドバイスと気づきをしっかりと生かし、自己肯定感を高めて、再び人生を切り拓いていきたいと願っている。