フィールドの序盤
ブログを見ていただきありがとうございます。
訓練生のYAです。無事、就労先が決まりましたので、この度筆を執らせていただきました。
現在、某公共放送などでも発達障害についての周知キャンペーンが積極的に行われている大きな潮流の中ではありますが、周知がさかんに行われているということは、それほど障害のことは知られていないということです。万一相手が知っていたとしても、スペクトラム(虹)というだけあって色彩や明度は千差万別です。配慮を求める際に、障害名を伝えるだけで自分の特性と配慮してほしいことは伝えきれるかというとそうでもないというのが世知辛い現状です。
私の就職活動は、全体的な“障害名“という大枠を提示した上で“自分の場合“の特性と対処する工夫すること配慮してほしいものはどのようなものなのか? の把握からはじまりました。
「工夫もしてみたがこれはどうしてもできない、ので、業務免除の配慮が欲しい」
「工夫もしてみたがこれはどうしてもできない、が、配慮があればできる」
「工夫の手間をかければ辛うじてできる」
「工夫しなくてもできる」
といったポイントが在る事を認めて言葉にして出せるようにする作業でもあります。
特性の把握は自分の腹を探るような作業です。探る上では自分の記憶や記録を遡って、特性が及ぼしている影響も含めて、改めてまざまざと思い知らされます。
ほとんど自分の短所や弱いところを直視していくという心がヒリヒリと痛む作業です。作業中は諦観の域に入ります。諦観という言葉は「断念してあきらめる」と意味をとられがちですが、「入念によく見ること、本質をはっきりと見極めること、事態を察してあきらめること」という意味でもあります。悪いことが起こった時や、叶えたいことが叶わないという事態に対して「何故そのことが起こったのか、何か原因があるのではないか」と物事のすべての原因を明らかに見ることで、「できないが、それはどうしてだ? どうするんだ?」ということの問い掛けに繋がってきます。そうしていくと、たくさんあると思っていた特性が、実は複雑に絡み合っていて連鎖してまた別の特性を顕在化していたという発見もあります。
自分の場合は特性として、瞬時の短期的な記憶保持力が弱いため、いきなり話しかけられた時など自分の準備ができていない時の聞き取りが苦手です。うまく聞き取りきれてない中途半端な情報しか得てない状態であたふたしているうちに相手が去ってしまい→そのまま指示を受けた状態になり途方に暮れ→分かる範囲で(中途半端な情報で)理解しているためミスや手戻りを発生させてしまい→手戻り作業で余計な仕事での疲れからくるストレスがかかり→疲れからミスをして焦燥で頭が動かなくなり→仕事しようにもそもそも思考が働かない……という風に転がるように連鎖が起きていました。
なので、私は自分の頭の短期的な記憶保持力を頼みにし切らないことにしました。
聞き取りの際に手元に記録する用意ができてから話を聞くことにしました、紙のメモでも、PCのメモ帳でもあるいはスマホでも電子メモでも、少なくとも記録を残して置いたら消去しなければ後からでも見直しができるので視覚的に確認できるものを用意していきます。メインメモリでの処理が追い付かないなら、外付けでメモリを増設して其方に記録を保持させておけばいいのです。
そして、聞き取れなければすぐさま聞き返すことにしました。これは当たり前だと思うでしょうか? これが毎日のことで毎回のこととして必ずといっていいほど聞き返すことになります。しかし、聞き返すことで正確性を担保することになります。恥は食らいますが飯も食えます。その後の負の連鎖の発生も食い止められるくらいなら私にとってはやすいものです。
この場合の求める配慮事項は、指示受けの段階で記録が残すことができる状況を整えるためのものになります、聞きながら書くといった同時並行が苦手でもあるので心持ちゆっくりめに話してほしい、もしくははじめから視覚的に確認が可能な文面での指示を求めました。求めた配慮の一例ではありますが参考になると幸いです。
最後になりますが通所している中で思っていたこととして、人生をゲームで例えるならば「辛うじてリトライ可能な覚えゲー」だと感じています。ゲーム本体の電源を落としてしまうまでは何度でもリトライ可能です。実社会では、リトライのたびに周囲からの信頼値がごりごり削れていくペナルティが発生しがちですが、就労移行支援ではむしろ失敗してもリカバリーが効きやすい面があります。福祉サービスですから、むしろ失敗した分だけ失敗への対策を立てる好機です。
福祉サービスの就労移行支援は、期間限定【利用期間2年】の修練所(レベリング場)です、期間内にレベリングをしっかりして道具を揃えていってください。さら就労塾の職員にPCの基本的な使い方を習ったり、特性の理解の堀下げを手伝ってもらったり、面接問答集の推敲の相談をしたり、面接の際に同行していただいたりと、フィールドの第1ダンジョンへの道のりを一歩一歩と詰めていける機会です。コツコツと目の前の課題に取り組んでいき、問題があれば職員や周りの人と相談を重ねて、確実に研鑽を積んでフィールドに出ていきましょう。
私もさら就労塾の職員や地域保健センター職員などの支援者、通院先の主治医、家族・友人からの視点や力を貸してもらってはじめて就労に繋げることができました。しかし、まだ第1ダンジョン(フィールドの序盤)を抜けたところです、まだまだフィールド攻略は終わっていません。これからです。
各々方、自分が攻略したいフィールドを見据えて邁進していってください。健闘を祈ります。
最後に今までお世話になった職員や訓練生の皆様、ありがとうございました。
(訓練生YA)