さらぽれの訓練の振り返り
【はじめに】
さら就労塾横浜事業所訓練生のMです。この度、就職が決まりました。そこで、2年弱の訓練を振り返ってみたいと思います。この記事をご覧になっているみなさんに、なにか参考になることがあったら嬉しいです。
もともと、私は大学卒業後、障害者として就職活動をする予定でした。就活の進め方等を、地域の就労支援センターに相談しに行ったところ、「対人コミュニケーションに不安がある。今のままでは就職は難しいし、仮に就職できたとしても、長く安定して成果を出していくのは難しいだろう。いったん就労移行支援事業所で職業訓練を受けたほうがいいのではないか」といった内容のご意見をいただきました。私自身も思い当たるところがあり、そのご意見を受け入れました。事業所を複数見学・体験した上で、自分に一番合っていると思った、さら就労塾で職業訓練を受けることにしました。
訓練の当初の目的は、コミュニケーション能力の向上、特に、「簡潔な話ができるようにする」「感情を適切にコントロールできるようにする」ことでした。しかし、後述するように、通所を始めると、その他の課題も次々に浮き彫りになっていきました。
以下、さらぽれで向き合った課題・取り組みを5つ、さらぽれで特に成長したことを3つご説明いたします。
【課題と取り組み】
①体調・勤怠
通所を始めた頃は、体調を崩しやすく、体調不良で週に1回程度欠席するような状況でした。そこで、まずは乱れた生活リズムを改め、規則正しい生活をするように心がけました(より確実にするため、生活管理表も併用しました)。また、職員の方々に定期面談(実際にはほぼ毎日の面談)をしていただき、体調を安定させるためのアドバイスをいただきました。その結果、通所開始から半年程度で、欠席はほぼ無くなり、勤怠の特段の問題は無くなりました。
しかし、体調の安定にはつながらず、半ば無理やり家を出て事業所に向かうなど、かろうじて通所はできているという不安定な状態が続きました。そのため、さらに2つの取り組みを行うことにしました。1つは「疲れのコントロール」、もう1つは「モヤモヤしたら職員に発信すること」です。この項目では、疲れのコントロールについて述べ、職員への発信は「他者を頼る」の項目で詳しくご説明します。
私は、2つの点で疲れのコントロールが不十分でした。1つは、自分の疲れ具合を自分で把握できないこと、もう1つは、疲れに対する適切な回復行動を取れないことです。疲れ具合を客観的に把握するために、疲れ具合の指標を作り、1時間に1回、自分が指標のどの段階にいるのかを理解するようにしました。また、回復行動については、様々なものを試し、自分に合ったものを見つけられるよう心掛けました。今では、「深呼吸」「肩のストレッチ」「目の前の作業に集中すること」が主な回復行動になっています。
②コミュニケーション
先に述べたとおり、「簡潔な話ができるようにする」「感情を適切にコントロールできるようにする」ことも、私の大きな課題でした。以前の私は話が無駄に長くなったり、まとまりに欠けたりしていました。また、自分の意見や思いを通そうと、つい感情的になることもありました。要するに、気難しくて、会話のキャッチボールがうまくできない人間でした(笑)
簡潔な話については、2つのことを意識しました。1つ目は、結論を最初に持ってくることです。一番伝えたいことを最初に話すことで、聞く側が分かりやすい話ができるようになりましたし、私も自然に話の情報量を絞れるようになりました。
2つ目は、報連相の「型」を作り、報連相の際にはその型に当てはめて話すようにしました。具体的には、「用件」「結論」「その他の内容」の順番で話す、ということです。例えば、期日の交渉であれば、「○○の業務で相談があります。□□の作業について、△△のため、期日までに作業を完了することが難しくなっております。そのため、期日を1日延ばしていただくことは可能でしょうか」といった具合に説明することを心掛けました。
これらの2つを心掛けた結果、簡潔で伝わりやすい話ができるようになり、訓練中のコミュニケーションをスムーズに行うことができるようになりました。また、身につけた力は、面接の際にもとても役立ったと思います。
③自己理解
通所を始めて半年程度経った頃、自分の強みも弱みも障がい特性も、あまり把握できていないことに気づきました。そこで、自己対処と、職員の方々の支援を借りて、自己理解を深められるように努めました。
自己対処としては、毎日訓練終了前に、その日の良かった点と改善点を書き出すことです。これによって、自分の強みと弱み、特に強みを徐々に理解できるようになりました。職員の方々にいただいた支援は、随時のフィードバックの他、定期面談での一日の振り返りです。職員からの見方を聞くことで、取り組んだ自己分析が、より客観的なものになっていきました。
これらの取り組みが、自己理解にとても役立ったほか、自分をより詳しく知るためのアンテナを張ることにもつながり、自分を知る機会を徐々に増やすことができました。例えば、面接練習の中から自己理解が深まりました。また、このブログ記事を書いている間にも自己理解が深まっています。
④他者を頼る
もともと、私は抱え込み体質でした。通所を始めて1年程度で、業務上必要な相談はできるようになりました。しかし、それ以上の相談には踏み切れず、なにかモヤモヤした気持ちがあっても、誰にも伝えることなく一人で溜め込んでしまっていました。これが精神面での体調の不安定につながっていました。
そこで、モヤモヤしたことがあったら、とりあえず職員に発信するようにしました。これは、2つの面で大きな前進でした。1つは、発信することで自分の気持ちが楽になることです。もう1つは、そのモヤモヤの対処法をアドバイスしていただけたことです。モヤモヤの発信によって、気持ちを楽にしたり、モヤモヤの自己対処技術を習得したりできました。
現在では、自己対処をして、自己対処で回復できないときは相談するようにしています。
⑤考え方
私は完璧主義な性格でした。そして、「自分はこうあるべき」(自分への「べき」)とか、「○○の組織にいる以上は、△△のような言動をするべき」(他者への「べき」)など、「べき」に縛られていました。しかし、さらぽれでの訓練を通して、自己評価が60点程度でも、実務ではまったく支障がないことに気づきました。この経験から、自分に必要以上のものを課さないようになりました。こうして自分への「べき」から解放され、その後、他者への「べき」の感情もあまり持たなくなりました。このように考え方が変わったことで、自分の気持ちや人間関係を楽にすることができました。
【さらぽれで特に成長したこと】
①体調の安定
さらぽれに通所してから、規則正しい生活をするようになり、疲れを自覚したり、疲れへの効果的な回復行動を取ったりする力が向上しました。当たり前のことだと言われればそれまでですが、当たり前のことを当たり前のようにやるだけで、日中活動の生産性が大きく上がることを実感しました。より一般に、基本的なことがとても大切なのだと気づいた2年弱でした。
②業務能力
業務能力には様々ありますが、私の場合は「コミュニケーション」「口頭での指示理解」「電話応対」の3つが特に向上しました。コミュニケーションについては、課題と取り組みの項目で説明したため、割愛します。
もともと私は、聞いた話が右から左に流れて行ってしまい、なかなか理解できないという問題がありました。そこで、話の要点だけを把握することを心掛けた結果、聞いた話をだいたい理解することができるようになりました。結果として、口頭での指示理解も十分できるようになりました。
また、以前の私は電話に恐怖心がありましたが、1年程度電話応対の訓練をした結果、取り次ぎまでは問題なくできるようになりました。
口頭での指示理解と電話応対は、もともとは障がい特性上できないだろうと思っていたため、それらができるようになったことには自分でも驚いています。
③マインドセットの変化
この項目は、課題と取り組みの「考え方」の項目で説明したことのまとめです。さらぽれでの訓練を通して、私は徐々に、人に寛容になっていきました。外面だけでなく、内面でも大きく成長することができました。
【おわりに】
この記事をご覧になっている方の中には、事業所の選択に迷っている方もいらっしゃるかもしれません。どの事業所が良いかは人それぞれですが、選ぶ際には、事業所を利用する「目的」を意識すると良いのではないかと思います。「自分が抱えている課題を解決するには、どの事業所が一番合っているだろうか」という視点から事業所を選ぶことで、より効果的に、就労準備を整えることができると思います。
最後になりますが、問題だらけの私に粘り強く指導してくださった職員のみなさん、協業の訓練などでお世話になった訓練生のみなさん、ありがとうございました。私はこれからも、「ぽれぽれ」の気持ちで、焦らず一歩一歩着実に進んでいこうと思います。職員のみなさん、定着支援でも引き続きよろしくお願いいたします。訓練生のみなさん、とても苦しい時期だと思いますが、その苦しさがいつか報われて、ご自身の納得のいく就労につながることを願っております。