旧コラム

障害者の就職――企業の採用担当者が重視するのは、まず継続力

池袋事業所

2016.05.27

障害者の就職――企業の採用担当者が重視するのは、まず継続力

障害者の就職――企業の採用担当者が重視するのは、まず継続力

「3日3月3年」という言葉を、年長者などから聞いたご経験はあるでしょうか?

仕事が続く人、続かない人。もちろん就職した人それぞれに事情がありますので一概には言えませんが、ある程度の期間を乗り越えると会社の空気に慣れたり、あるいは仕事を覚えてひとり立ち出来るようになって、それからは順調に働きやすいということはあるようです。「3日3月3年」というのは、そこを乗り越えれば辞めずに続けられるという、仕事における節目を表しているとされています。

ではこの節目、障害者雇用ではどうでしょう。障害者雇用の場合、一般にどのくらいの期間頑張れば「慣れる」ものなのでしょうか?

 

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センターが2008年から2012年にかけて、ハローワークの障害窓口から一般企業へと就職した精神障害の方に対して4回の追跡調査を行い、面白い結果を発表しています(※)。精神障害の手帳所持者が対象なので、発達障害の方もこれに含まれると考えられます。

その結果によると仕事が「1年続かなかった人」、その内71%は「3ヶ月未満で退職」に集中していました。

さらに「3年続かなかった人」、その内の実に84%は「1年未満で退職」に集中していたのです。

逆に言えば「3ヶ月続けられた人の多くはそのまま1年以上就業」し、「1年続けられた人のほとんどはそのまま3年以上働き続けられている」ということになります。

ちなみに退職理由は体調不調が34%、人間関係が14%、仕事がきつい・力不足が8%、その他・不明が44%と様々でした。

 

さてこれから就職を考える時、この3ヶ月、1年という壁をどうとらえるべきでしょうか。

3ヶ月というのは恐らく、人が「無理」を出来る限界の期間と言えます。新しい環境に入って、新しい場所・人・生活ペースに晒されれば、どんな人にもストレスが生まれます。次第にそれに慣れていくことにより、新しい環境は自分にとって「無理」ではなくなり、あまりストレスなく過ごすことが出来るようになるわけです。

しかし逆に、いつまでも慣れていくことが出来なければ、3ヶ月を耐え切れずに脱落することになってしまいます。

そして続く1年という期間には、せっかく慣れた環境に様々な細かい変化が訪れます。季節の変化、人の変化、仕事の変化は、どこに行っても避けられません。

とはいえ、就職してから「続きませんでした」では後悔先に立たず。せっかくなのでこの情報を、就職前に活かすことを考えてみましょう。

 

たとえば訓練などに通っているなら、働こうと考えている時間帯を3ヶ月、安定して訓練出来ていれば体調面では準備が出来たと考えられます。一人で活動している人なら、時間を決めてハローワークや図書館などに通ってみるのがいいかもしれません。

1年の活動期間があれば、季節に左右されて体調が落ちたりしないかをチェックする。寝坊が多くなったり、いつも通っているところをサボりたくなることが多くなれば要注意です。

また実習なども新しい環境や人間関係を試す機会ですから、チャンスがあれば積極的に活かしたいところです。

自分が今就職に向けて「3ヶ月を越えられる」段階か、「1年を越えられる」段階か、期限を決めて見計らうことが出来ます。「1年を越えられる」段階であれば、もう就職に向けて十分準備が出来ていると言えるでしょう。

 

まだ準備が足りなかったり、弱点がみつかったらどうするか。これは一人で乗り越えようとしても大変ですね。支援機関や主治医、ハローワークの方。頼れる方にどんどん相談していきましょう。どのみち就職したら会社はチームワークですから、どんなに能力があっても一人で解決できることは多くない。相談することも、仕事に向かう大切な練習の一つになります。

 

 

※独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 『精神障害者の職場定着及び支援の状況に関する研究』2014年3月

http://www.nivr.jeed.or.jp/download/houkoku/houkoku117.pdf