皆さんが、「就職したい!」と思ったときに、会社に障害を伝えて就職するか、伝えずに就職するか、悩むところだと思います。
しかし、障害者手帳を持っている方には何等かの診断があり、その症状によって本人の努力では克服しづらいことがあります。そこで、「会社に障害を伝えて就職する」という選択肢があります。
メリットとしては例えば、定期的に通院している方は、仕事に穴をあけていると誤解されることなく安心して休みを取ることができます。また、障害上苦手な仕事やできない仕事への理解を得やすいので、得意な仕事を活かして働くことができます。
でも、お金をもらって働くのに、できないことがあってもいいのだろうか?自分のわがままだと思われるのではないか?など、疑問が出てくるのではないでしょうか。
会社に障害を伝えて就職するということは、会社側が可能な範囲で、障害特性に応じた、成果を出すために必要な配慮を会社にお願いできるということです。
これを、私たちは「配慮事項」と呼んでいます。
ただ、自身の配慮事項が良く分からなくて困っている、という方も、多いのではないかと思います。
先日、とある訓練生Bさん(仮称)との面談の中で話し合った配慮事項について、お伝えしたいと思います。
Bさんは、パソコンのスキルを磨いて、事務職での就職を目指しています。しかし、働いた経験がないため、事務の仕事のイメージや仕事をするにあたっての自分の得意・不得意がまったく分からない状態でした。
そこで、今訓練で取り組んでいる業務を一つずつ紙に書き出してみて、それらに取り組むことでどんな気持ちになるかを考えてみました。
そこで、Bさんは、あることに気づいたのです。
「終わりが見える業務がどんどん片付いていくのは、気持ちがいい…」
ここに、Bさんの特徴が表れています。
Bさんは、終わりが見える=納期が短い業務のほうが、取り組みやすいのです。できれば当日中に終わる業務だと、不安もなく取り組むことができます。
逆に、納期が無かったり、ずっと先になると、どこから取り組んだら良いのか分からず他の業務にも影響が出てしまいます
つまり、スケジュール管理が苦手なのです。
このような特徴を持つBさんは、会社でどのように働くことができるのでしょうか。
例えば、こんな働き方があります。
- Bさんに業務を依頼するときは、当日中に終わるものを依頼する。
- 長期にわたる業務は、あらかじめ細分化して終わりが見える状態にして依頼する。
これが、Bさんが会社にお願いしたい配慮事項です。
Bさんは、自身の特徴に対するこれらの配慮を受けることで、Bさんが得意なことに特化して取り組めるため、本来持っている力を発揮できます。それは、生産性の高い働き方につながります。結果、自ずと職場で必要とされ、職場の中で自分の存在価値を見出すことができると思います。Bさんの自信やさらなる意欲ともなるでしょう。
このように、働くうえで会社にお願いできる配慮事項を明確にし、自身が会社で活躍できるイメージが持てることで、Bさんの訓練への取り組み姿勢も、これまでにも増して積極的になりました。
会社にこういった配慮をしていただくことは、わがままではありません。
障害者雇用の面接では必ずと言って良いくらい「配慮事項はありますか?」と聞かれますが、これは、できないことを要求するよりも一定の配慮をすることで最大限の能力を発揮してほしい、という会社からの要望なのです。
Bさんの例で考えると、会社側でBさんの業務のスケジュール管理をすることで、Bさんは不安になって手が止まることなく業務だけに集中することができ、期待以上の成果を出せるということです。
おさらいしてみましょう。
今回のBさんは、障害者雇用で就職を目指すものの、自身のできること・できないことが良く分からず、配慮事項が見つからなくて困っていました。
そこで、「その業務に取り組むときにどういう気持ちになるか」を考えました。そこにはBさんの特徴がよく表れていたので、それをヒントに自身ができること・できないことを明確にしていきました。
配慮事項の見つけ方は人それぞれですが、Bさんはこの方法によって、自身の「配慮事項」と「働くイメージ」の二つを手に入れました。
オールマイティになんでもできる必要はありません。むしろ、何ができて何ができないのか、自身の得意・不得意は何かをしっかり把握して、応募する会社に伝えられるように準備をしていきましょう。