今回の自立支援給付の報酬改定に対する驚き
今年から自立支援給付の報酬改定がありました。就労移行支援事業所に関係する改定はいくつかありますが、一番大きいのは就労実績がこれまでは「半年以上」だけだったのが、「半年以上」「1年以上」「2年以上3年未満」と加算が段階的になり、障害者の就労継続の期間が事業所の評価となったことです。正直いって驚きでした。
さらぽれは設立の時から「就労は続けてなんぼ」と考えて、「働き続ける力」を軸に訓練や就労移行支援をしてきました。ですからさらぽれ卒業生の就労継続率は高いのですが、このスタンスが世の中の大勢となるにはもっと時間がかかるだろうと思っていたからです。こんな短期間で変わるとは考えてもいませんでした。
この報酬改定で、他の就労移行支援事業所の多くが「定着支援がたいへんになる」とおっしゃいます。就労継続のために、これまで半年間に区切っていた職場訪問や相談対応を長く続けなければいけない、このためのマンパワーが必要になる、というわけです。
けれど職場訪問や相談対応の期間を長くし、密度を上げればひとは働き続けることができるのでしょうか。
「働き続ける力」が身についていないのに、つっかえ棒だけ多くしてかろうじて立っている(立たされている)状態が本人にとってうれしいことなのかどうか。イヤになっちゃったものはイヤだし、体調が悪くなったのはどうしようもないと思うのですが。
それに「自分のことは自分で決めたい、他人が業績を理由に自分の離職を阻止するために、説得にかかる、そんなのいやだ」と思いませんか?
それは障害があろうとなかろうと、同じですよね。
働く力=安定して働き続ける力
とはいえ転職はなかなかのストレスです。「できれば、働き続けたい」
「働き続ける力」ってなに?――職場に適応できる考え方とやり方を身につけていること。
私たちが企業の中で働くとき、組織の一員として受け入れられていると感じられることは大きな要素です。障害があっても同じで、就労後、企業の中でお客様扱いされるのではなく、同じ仲間・同僚として認められ、組織の一員として評価されていることが、ここで働き続けたいと思うベースでしょう。
そのためには、分担された仕事を期待通りに仕上げる力が必要ですし、チームでスクラムを組む力、健康をコントロールする力、問題を解決する力が不可欠だと思うんです。 頼まれた仕事もろくにできない上に、チームワークを乱すは、しょっちゅう休むは、職場でなにかあると騒ぐだけで考えようとしない、では組織の一員として受け入れられるのは難しい(ですよね) だったら、就労移行支援事業所で訓練を通じて、必要な配慮のもとで違和感なく職場の一員としてやっていく力がついていればいい。
そのためにさらぽれでは、職場を想定した環境の中で、今は仕事の道具としてあたりまえのパソコンの業務での使用を習得し、オフィスワークでの指示受けと報告、上司・同僚とのコミュニケーションのベースを身につけます。 健康のコントロールも、さらぽれ利用中に、調子を崩すきっかけや条件を知って対処法を見つけるようにしています。また、健康、生活、家族・友人関係などに問題が起こったときに相談して対処できるようになっていれば大丈夫でしょう。
こうして安定した通所ができれば、職場の一員としてやっていけますから、就労後の定着支援はささやかなもので十分のはずです。定着支援は企業の実情にあわせた修正、あるいは不足点の強化、いわばアフターフォローと考えていいのかもしれません。
就労移行の仕事は定着支援ではありません。「働く力=安定して働き続ける力」を習得する訓練を行うことだと考えています。雇用先の企業が求めているものもこれです。 濃厚な定着支援が必要ということは、すなわち就労移行での訓練が不十分だったということになります。利用中の職業訓練こそが就労継続の要であり、定着支援は就労移行支援事業所の「最後の仕上げ」だと言えます。