例えばADHDをもつ脳の中では、最新のタスク=最優先事項になりやすい傾向があります。
ADHDがなくても衝動性が強いタイプだと、同じ傾向になりやすいかもしれません。この傾向がある場合、時間が経って新しい情報が上に重なると、以前に入れた情報の優先度は脳の中でどんどん低くなっていきます。今重要なのはこの予定だと理性ではわかっていても、脳の方が勝手に新しい方をクローズアップしてしまうのです。
もしこういう傾向に思い当たるところがあれば、まずはそれを自分の脳のクセとして認識しておきましょう。
自分の脳も自分の道具のひとつと考えれば、その道具のクセを知ることが上手く使いこなすための第一歩になります。
例えば今回のご相談者のように、ふと思い立った情報に行動が縛られやすいのであれば、適切な情報で自分の行動を縛れるようにします。
いまやるべきこと、すぐやらなくてはならないことを常に「新しい情報」にしておくこと。それにはいつでも目で確認できる状態にしておくのが確実です。
それはスケジュール帳でもふせんでも、自分に合った方法でかまいません。
でも、他の予定が一緒に書かれているとそちらにひっぱられてしまうタイプなら、今やるべきことだけをクローズアップしてくれるようなものがあるといいですね。
例えばPCで作業する人なら、GoogleカレンダーやOutlookなどのアラート機能が有効かもしれません。ふせんでもやるべき順番に重ねて終わったら剥がしていくようにすれば、今やることだけを見られるようにできますね。
どちらの場合もこうした情報はすぐに、何度でも確認できるようにしておくのがコツです。頻繁に見ることで、脳はこれを最新のタスクと判断して優先順位を常に高く保っておくことができます。
また別の「脳のクセ」として、マルチタスクの苦手というのもあります。ひとつの仕事だけに集中するのは全く苦にならないけど、やるべきことが色々重なってくると混乱してしまう。
その日のうちに色々やることがあって、ひとつの作業をしていても別の作業のことが気になって集中できないタイプなら、まずその日やることを一覧にするのがお勧めです。
たとえばミニホワイトボードに予定や注意を記入して、目のつくところに置く。
ミニホワイトボードは、100円ショップなどで安く手に入ります。
出社したら、その日の予定、注意事項などをスケジュール帳から書き写します。
ポイントは、アンバランスになっても良いので大事なことは目立つように書くことです。ここでも、自分の脳のクセの理解が役立ちます。作業中に脱線しがちなら「脱線するな」、報告を先延ばししがちなら「終わったらすぐ報告」と、自分へのツッコミを入れておきましょう。
アンダーラインやカラーペンなど上手くつかって、未来の自分の気を引くように工夫してください。終わったタスクは、線を引いて消しておくと良いでしょう。
スケジュールの立て方にも工夫をしてみましょう。
スケジュールを立てるときには、もちろん大雑把すぎてはいけません。30分で終わる予定のために午前中いっぱいを空けるようなスケジュールでは、効率が悪すぎます。だから移動時間や作業時間など、かかる時間はちゃんと調べる。
でも一方で、時間ギリギリに予定を詰め込んでしまうのもよくありません。
脱線しがち。忘れ物をしがち。不運やトラブルに会いがち。そうした傾向を自覚しているなら、なおさらです。
予定には、+30分程度の予備時間を入れておきましょう。なにかトラブルが起きたときも多少なら取り戻せますし、多少でなくても上司や同僚に連絡してサポートを求めるには十分な時間です。
またスケジュールを書くときは、その予定の時間だけでなく、その予定のために動き始める時刻も書き込みます。外で人に会うならば、待ち合わせ時刻だけでなく会社を出発する時間も書いておきましょう。
例えば10時に人に会う約束で、自宅から待ち合わせ場所までは電車40分+徒歩20分の合計1時間とします。到着時刻は約束の10分前として、9時50分。移動時間が1時間なら、出発時刻は8時50分。電車の待ち合わせを考慮して、さらに+15分で8時35分。ここにさらにプラス30分の余裕時間=『自分用予備時間』を入れておくのです。つまり、出発時刻は8時5分となります。
スケジュール帳には、待合せ時刻と一緒にこの出発時刻も書いていきます。
N氏と待ち合わせ
8時5分自宅出発
9時50分着 ○○駅改札前
プラスした30分の『自分用予備時間』が、自分が脱線してしまったときの余裕になります。何もなければ30分前についてしまいますが、遅刻するよりはいいですね。30分というのはあくまでも目安で、自分の傾向に合わせて調整してください。ただし1時間も2時間も入れてしまうのは入れすぎなので、困ったときに十分余裕をもって連絡できるくらいの時間にしておくのが良いでしょう。
「自分の行動パターンを把握して、自分自身で指示を出す」という考え方がイメージできましたでしょうか。
行動パターンを把握するには、予定外の行動をどの程度続けてしまうのか、どんなタイミングで起きやすいのかなど、自分のクセを知る必要があります。
ぜひご自身のクセを知り、脳という道具を使いこなしていきましょう。